『招かれざる客たちのビュッフェ』 クリスチアナ・ブランド


『緑は危険』、『ジェゼベルの死』、『はなれわざ』と、傑作と評される長編を次々に発表してきた本格派の重鎮クリスチアナ・ブランドのなんとも凝ったタイトルの短編集だ。
東京創元推理文庫の紹介文が本書の魅力を余すところなく語っているので、ご紹介します。

ブランドご自慢のビュッフェへようこそ。今宵カクテルは、芳醇な香りに満ちたコックリル印(ブランド)。本場英国のコンテストで一席となった「婚姻飛翔」をはじめ、めまいと紛う酔い心地が魅力です。アントレには、独特の調理(レシピ)による歯ごたえ充分の品々。ことに「ジェミニー・クリケット事件」は逸品との評判を得ております。食後のコーヒーでございますか?当店の規則に従いまして、ブラックでお召し上がりください。いえ決して毒などは・・・・・。とにもかくにも、稀代の料理長(シェフ)がその腕を存分にふるった名品揃い。ぜひ一度ご来店のうえ、ご賞味くださいませ。

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このコピーをお書きになったのは、おそらく当時の東京創元社編集部のおひとりなのでしょうが、まいりました。店頭でこの文章をみただけで、ためらいもなくお金を払ったのが本書です。以来、例によって他のブランド作品同様に本棚の片隅で長い眠りについていましたが、このたびポツリ、ポツリと拾い読みをしてみました。

フランス料理のコースをひねった五部仕立てからなるこの短編集は、いずれも粒揃いの十六作品が収められています。

【第一部 コックリル・カクテル】
☆事件のあとに
☆血兄弟
☆婚姻飛翔
☆カップの中の毒

【第二部 アントレ】
☆ジェミニー・クリケット事件
☆スケープゴート
☆もう山査子摘みもおしまい

【第三部 口なおしの一品】
☆スコットランドの姪

【第四部 プチ・フール】
☆ジャケット
☆メリーゴーラウンド
☆目撃
☆バルコニーからの眺め

【第五部 ブラック・コーヒー】
☆この家に祝福あれ
☆ごくふつうの男
☆囁き
☆神の御業

これらのなかで、「もう山査子摘みもおしまい」はイギリスミステリ傑作選’80年版『眼には眼を』に収録されていて読んだ記憶があったが、何とも難解で苦い味だったのをかすかにおぼえている。また、世評の高い「婚姻飛翔」や「ジェミニー・クリケット事件」などは、皮肉に満ちた酷薄さにゾクッとしたり、悪事の疑似体験に秘かな愉しみをおぼえたりと、手の込んだ物語にたしかな読みごたえを感じる。
その一方で、「スコットランドの姪」は比較的読みやすくシャレた結末もよかったので、ほのぼのとしたいきさつから始まる「この家に祝福あれ」にもつい幸福な読後感を期待したのがとんでもない間違いだった。最後の一瞬でこうも鮮やかにブラックなオチを見せられては、あ然としつつもただただ作者に拍手を送るばかりです。

食前のカクテルであれ、アントレであれ、はたまた食後のブラック・コーヒーであれ、収められた短編のなかから気に入ったタイトルの作品をときおり拾い読みしてみることをお薦めいたします。いえ、決して一気にお読みになってはいけません。とびっきりの毒気にあたって眩暈などおこされても当方のせいではございませんので、あしからず・・・・・・。


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atmos-nwp の紹介

主に50~80年代の海外ミステリーの紹介を兼ねて読後感を綴っています。本格、倒叙、ハード ボイルド、冒険、スパイ、安楽椅子、ユーモア系等ジャンルは問わず読み散らかしてきました。ときには散歩の道をそれて50~70年代のモダンジャズやスキー、バラ園芸にもふれています。HP「気象と気候値のページ」も運営していますので、興味のある方は一番上のタイトルの下にある<気象と気候値のページへ>をクリックして是非お立ち寄り下さい。
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