『ジェゼベルの死』 クリスチアナ・ブランド


 

『緑は危険』、『はなれわざ』の二冊とともに長い間本棚の片隅に眠っていた作品だ。
一体にクリスチアナ・ブランドの作品はとっつきにくい印象がある、といえば、「ウン、確かにそうだよナ」と賛意をあらわしてくださる方が多いのではないか。ただ、いわゆるパズラーにとってはこのとっつきにくさ、難解さこそがブランドたる所以だということなのかもしれません。
この物語の中心人物、イゼベル・ドルーはジェゼベルという綽名をもつ女優です。ジェゼベルとは旧約聖書に名を残す悪名高い古代イスラエルの王妃で、その悪行のゆえに城門から突き落とされて非業の死をとげたとされています。このあたりにも、もうすでにブランドの伏線がほの見えて、物語の重厚さを感じさせるあたりはサスガです。

 時はまだ先の大戦のなごりを引きずる1947年頃のイギリス。帰還軍人のためのモデルハウス展を盛り上げるためのアトラクション劇に出演する女優イゼベルに、一通の脅迫状が届く。「イゼベル・ドルー----お前は殺される」。果たして華々しく劇の幕は上がり、照明が舞台上の塔を照らし出したとき、イゼベルの体は力なくバルコニーから落下した。かつて純粋な青年将校を自殺に追いやったイゼベルら三人への復讐劇の幕が切って下ろされたのだ。

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事件解決に立ちむかうのは、「ケントの鬼」とおそれられるコックリル警部です。紙巻きタバコ好きのために指先がニコチンで染まり、ヨレヨレのコートに身をつつんだこの男、とびきりの痛烈な皮肉屋でもあります。こう考えてみると、名探偵は例外なくクセ者ぞろいですネ。

この作家は難解さが特徴と書きましたが、良さも書いておかなければ片手落ちというものでしょう。巧妙に仕組まれた伏線、二転三転する結末のどんでん返しの鮮やかさがこの作家の持ち味でもあり、それらはこの作品でも充分に発揮されています。
ただ、それならとばかりに『緑は危険』や『はなれわざ』を手にとるかといえば、それはまた別、少しほとぼりをさましてからにします。


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atmos-nwp の紹介

主に50~80年代の海外ミステリーの紹介を兼ねて読後感を綴っています。本格、倒叙、ハード ボイルド、冒険、スパイ、安楽椅子、ユーモア系等ジャンルは問わず読み散らかしてきました。ときには散歩の道をそれて50~70年代のモダンジャズやスキー、バラ園芸にもふれています。HP「気象と気候値のページ」も運営していますので、興味のある方は一番上のタイトルの下にある<気象と気候値のページへ>をクリックして是非お立ち寄り下さい。
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