『幻想と怪奇/2』 早川書房編集部編


 

不思議な世界にいってきました。怖くて、でも、おもしろかった。

さきに国内の幻想文学作家、泉鏡花の代表作『高野聖』を読み返したので、この際ついでに海外の作品もと書棚をあさってみた。早川書房の異色作家短編集に収められているロアルド・ダール『キス・キス』、スタンリイ・エリン『特別料理』についてはさきに触れたことがあるので、今回はご遠慮いただく。そこで、『サキ短編集』か『幻想と怪奇/2』(早川書房編集部編)のどちらかということになったわけだが、結果後者に落ち着いた。

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収められているのは以下の十一作品で、名前を聞いたことがある作家は半数にすぎない。

「ルクンド」 エドワード・ルカス・ホワイト
「マクスンの人形」 アンブローズ・ビアーズ
「猿の手」 W・W・ジェイコブズ
「人形の家」 M・R・ジェイムズ
「ダンウィッチの怪」 H・P・ラヴクラフト
「胸の火は消えず」 メイ・シンクレア
「開いた窓」 サキ
「ハロウビー館のぬれごと」 ジョン・K・バングズ
「ビールジーなんているもんか」 ジョン・コリア
「蛇」 ジョン・スタインベック
「ミリアム」 トルーマン・カポウティー

短編アンソロジーの常で例によって、目次から面白そうな作品をひろっては読むというやり方だ。印象に残った作品のいくつかを書きとめます。

「ルクンド」 エドワード・ルカス・ホワイト
アフリカ奥地を探検する一行をめぐって、次々と体にできる不気味な腫れ物(癬;よう)に憑りつかれた男や呪術医法にまつわる奇譚。体に剃刀をあてられたときのゾクリとするような恐怖と生理的な気味悪さをあわせもった作品。

「猿の手」 W・W・ジェイコブズ
持ち主の願いを三つまでかなえてくれるという言伝えをもつ「猿の手」。ふとしたことでそれを手に入れた一家を悲劇が見舞う。この種の作品が陥りがちな教訓めいたオチは全くなく、あくまでも怪奇で残酷な語りに徹している。

「開いた窓」 サキ
転地療養に訪れた先の館は、三年前に主を含めた三人を失う悲劇的な事故に見舞われたのだという。そんな話をしていたたそがれ時、開かれた窓から眼に入ってきた光景は・・・。
わずか4、5ページの短い物語のなかに、一見普通にみえる人間にひそむ怖さが見事なまでに描かれている。名短編と評されるのも道理です。

「蛇」 ジョン・スタインベック
女のもつ神秘的で、底知れない怖さを冷徹な観察眼で描いたスタインベックの作品。蛇が大嫌いな分、逆に吸い込まれるように読み進んでしまうところがある。

「ミリアム」 トルーマン・カポウティー
収録作家のなかで最も新しい作家、とはいってもすでに二十世紀の古典的作家に数えられているトルーマン・カポウティーの作品。何の違和感もなく自然に物語の世界に引き込まれるあたりはさすがです。逆にそのせいもあって、かわいさと背中合わせのゾッとずる不気味さはとびっきりだ。根拠もない想像だが、この作品に影響を受けた作家は現代の日本にもいるのではないだろうか。

田村隆一、都築道夫、大久保康夫と訳者も粒揃いだ。あとがきに相当する「幽霊たちの舞踏会」には(三一.八編集部M)とあるが、昭和三十年代初めの海外ミステリーをめぐる空気はどんなものだったのだろうか。
臆病なタチですから、深夜一人で読むなどはとんでもない。ストーブで部屋を暖かくして、真昼間に読んだことは言うまでもありません。

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atmos-nwp の紹介

主に50~80年代の海外ミステリーの紹介を兼ねて読後感を綴っています。本格、倒叙、ハード ボイルド、冒険、スパイ、安楽椅子、ユーモア系等ジャンルは問わず読み散らかしてきました。ときには散歩の道をそれて50~70年代のモダンジャズやスキー、バラ園芸にもふれています。HP「気象と気候値のページ」も運営していますので、興味のある方は一番上のタイトルの下にある<気象と気候値のページへ>をクリックして是非お立ち寄り下さい。
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