『だれがコマドリを殺したのか?』 イーデン・フィルポッツ


遠い昔、夢中で読み漁った『赤毛のレドメイン家』、『闇からの声』の作者フィルポッツがハリントン・ヘクスト名で1924年に発表した作品だ。長い間入手不可能に近かった作品だが、2年ほど前に東京創元推理文庫から刊行された。
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だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫)

だれがコマドリを殺したのか? (創元推理文庫)

カテゴリ:Kindle版

発売日:2015-03-23


若い医師ノートン・ぺラムは、休暇で訪れた保養地で出会った女性に一瞬で心を奪われた。だが、彼の富豪の叔父は、叔父が指名した女性との結婚を甥への遺産譲渡の絶対条件としていた。一途に思いつめるノートンは莫大な叔父の遺産を放棄してまでも、”コマドリ”という愛称をもつ双子の女性ダイアナとの愛を貫くのだったが、思いもかけない運命の冷たい仕打ちが彼らを待ち受けていた。

実は、イーデン・フィルポッツという作家の欧米での評価は、田園小説作家としてはともかくミステリー作家としては現在にいたるまでいまひとつかんばしくないのだという。それが日本では、江戸川乱歩やヴァン・ダインによる激賞の影響もあって、現代にあっても依然『赤毛のレドメイン家』、『闇からの声』がベストランキングに顔を出すほどである。その理由のひとつには、内容的にはショッキングな犯罪小説であるにもかかわらず、田園小説家として名を馳せたフィルポッツの英国らしい節度ある叙述や表現が日本人に受け入れられたこともあるのではないか。

さて、本題の『だれがコマドリを殺したのか?』だ。
自慢でも開き直りでもなく、十代半ばからミステリーと名がつくものならば手当たり次第に読み漁ってきた、言ってみればミステリー読みにかけてはスレッカラシだ。だから、読み始めた時点ですでに結末は見えていた。しかし、トリックとは関係なくこの物語は読者をして淡々と読ませるのだ。それは、ミステリー作家という前に卓抜なストーリーテラーであったフィルポッツらしい叙述によるところが大きいのではないだろうか。

もちろん、複雑で多様な現代ミステリーになじんだ読者にとっては物足りないさを感じるのはやむをえないでしょうが、英国ミステリー黎明期を飾る作品として手にとってみるのも一興だろう。


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atmos-nwp の紹介

主に50~80年代の海外ミステリーの紹介を兼ねて読後感を綴っています。本格、倒叙、ハード ボイルド、冒険、スパイ、安楽椅子、ユーモア系等ジャンルは問わず読み散らかしてきました。ときには散歩の道をそれて50~70年代のモダンジャズやスキー、バラ園芸にもふれています。HP「気象と気候値のページ」も運営していますので、興味のある方は一番上のタイトルの下にある<気象と気候値のページへ>をクリックして是非お立ち寄り下さい。
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