電源トランスが220~250Vのノグチ製PMC-190SHと決まれば、おのずと使う出力管は6AH4GTあたりに絞られてくる。この三極管はもともとはテレビ用の垂直増幅管だったそうで時々オークションにも顔を出すが、なかなか競り落とすことができない。生来人様と競うことが苦手なので、オークションはあきらめて米国の通販サイトAntique Electronic Supply(通称AES)から入手することにした。
いずれ使うこともあろうかと、しばらく前に6SC7と6SL7GTは入手していたのだが、どうせなら三段化をと新たに6SN7GTを手に入れた。
電源ユニットから始めてバイアスユニット、初段ユニットと、ゆっくり、ゆっくり作りすすむ過程は、作り手にとっていってみれば何ものにも代えがたい至福の時間、このままいつまでも完成しないでいてほしいと思うほどだ。
ようやく組み立てが完成した6AH4GT全段差動PPアンプの内部です。今回の配線はけっこうむずかしかったが、その分だけ作る楽しみも大きかった。300Bシングルのときのような整然とした幾何学的な配線には及びもつかないが、せいいっぱいの結果がコレ。
7.5Ωのダミーロードをかましたテスターでの最終的なチェックもクリアして、いよいよスピーカーに繋いで音出しに臨む。「あんなにチェックしたんだから大丈夫、大丈夫」と言い聞かせながらも内心ドキドキ状態で、いざ電源スイッチを入れてボリュームをゆっくりと11時に・・・・・・。
なんと、スピーカーから音が出ない!
そんなバカな・・・・。
「冷静になれ、冷静に」と焦る心を抑えながらも、「そんなバカな。一体どこで間違えたんだろう?」と、配線チェックを繰り返すこと数日にわたるも改善の糸口はなし。そりゃ、そうですワ、自分は間違えるワケないと思い込んでいるですモノ。そう思っている限りミスは発見できないんですネ。
このうえは、と管球アンプ作り50年という隣町の超ベテランにアドバイスを乞うたところ、2日後『原因がわかりました』とのご返事。早速お伺いすると、お手本にあるEL34と今回使った6AH4の違いの理解不足からくるアースラインミスだった。EL34では第3グリッド(1番ピン)からアースをとるのだが、三極管6AH4は1番ピン(グリッド)からアースしてはいけなかったのだ。お話を聴いて初めてナットク、基本の大切さを痛切に思い知った一瞬でした。
完成したセカンドアンプ、6AH4GT全段差動PPアンプです。真ん中の6SN7GTをはさんで左側がやや背高なRCA製、右側がずんぐりのGE製と見てくれは不揃いになってしまったが、二本の特性を1~2mA以内に抑えることを優先した結果です。特性にバラツキが大きいテレビ球ということもあって10本買い求めたなかからようやっとあわせることができたのだが残る6本は眠ったままで、行く末なんとか陽の目を見せてあげたいものだ。
なんとか音を聴くことができた6AH4GT全段差動PPアンプは、プッシュプルならではの豊かな厚みがありながらそれでいてくっきりと音像が立ちあがり、明るくキレのいい響きのミニワッターとは一段スケールの違った心地よい音が聞こえてきます。
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