ぺるけさんの『情熱の真空管』に出てくる71Aシングルのことが以前から気になっていた。差動アンプの製作紹介を中心としたこのHPのなかに、少し異色とも思える71A(171A)シングルミニワッターの紹介がある。
このアンプは、東栄の1400円程度の超廉価に属する小型出力トランスT-1200を使っているわけですが、鳴らすたびに「なんでこんなにまともなローが出るの?」と不思議に思います。
この71Aシングルは、厳しい耳を持ったプロエンジニア達がやってきて真剣に聞いてくれました。「この音は別格、満足がゆくミキシングができた時の音がこんな感じ。(略)」というのが彼らの答えだったようです。(中略)
300BやPX25といったような高貴ともいえる直熱管の世界もありますが、こんなローパワーで廉価なアンプでもたっぷりと楽しめる世界があります。(『情熱の真空管』より)
こんな記載に惹かれ、いつかは作ってみたいと思っていた。
思いをくすぶらせながらときおりオークションサイトをみていると、71Aや171Aってそこそこ出ているんですネ。そこで、古典球171Aには手を出さずやや新しめの71Aが二本入手できたのを幸いに、シングルミニワッターに挑戦してみました。今回はローコストをテーマにして、シャーシは二千円ちょっとで買えるノグチトランスのオリジナルS-35とO-35に。電源トランスは春日無線のKmB60F、出力トランスは東栄変成器のT-1200とぺるけさんご推薦の品でかため、あとの部品はいつものように頒布をお願いした。
シャーシの穴あけ加工から始めたのは2台のUSBDACとMCカートリッジ用昇圧トランスケースくらいでアンプは初めての経験だ。しかも、今回はUXソケット用に30㎜の大きな穴が必要だったので少し苦労はしたが、ホールソーやリーマーの力を借りて何とかクリア。額の汗をふきながらあらためてシャーシを眺めると、ピカピカの本体が何となく気にかかる。そういえば、いままでのシャーシはすべてヘアライン仕上げやきれいな塗装が施された筐体ばかりだった。そこで、ひと手間加えてアイボリー色にアルミ塗装を行い、ついでにつや消し塗装したサイドウッドを張ってみることに。
内部配線はいつものようにぺるけさんの解説を忠実に見習い、W25×D15×H4㎜という小さなシャーシ内に合理的に収めるべくない知恵をひねる。
ところが、ここで大きな問題発生。
シャーシの高さが4㎝しかないので、コンデンサが入りきらないのだ。これが5㎝なら何の問題もないのだが、このときほどわずか1㎝の違いを大きく感じたことはない。
さ~て、どうしたものか。思案すること数十分・・・・・・、思いついた苦肉の策は
底板を浮かせて取り付ければいいんじゃな~い?熱もこもらないし一石二鳥かも。
というわけで、シャーシ本体と底板の間にプラスチックスペーサをかましてみました。
最後に、出力トランスT-1200が裸仕様なので誤って触れたりしないように、百均ストアでペン立てを買ってトランスケースに加工した。
なんとか仕上がった姿がコチラ。
肝心の音のイメージはといえば、ぺるけさんが「腰の座ったナチュラル感のある音」とおっしゃるとおり、小出力ながら引き締まった自然な低域の響きと直熱三極管特有(?)ののびのある高域、そしてセパレーションのよさが耳に心地よい。
「測定データはどうした」という声が聞こえてきそうですが、情けないことにWabeGeneとWaveSpectraをまだ十分使いこなせていない。な~に、自分の耳と感性が物差しさ、なんて苦しい言い訳をいうとたちまちカミナリが落ちてきそうだが、ここはお情けをもってご容赦を。
実は、普段聴いていた6AH4GT全段差動PPアンプの6AH4GT2本がとうとう昇天してしまったので、新しい6AH4GTを手に入れるまでの間はこの71Aシングルがレギュラーポジションを占めていて、6AH4GT全段差動PPアンプとは異質の音を響かせてくれている。このままだと6N6P差動PPミニワッターの出番がなくなりそうで、うれしいやらさびしいやら微妙な心もちだ。
- 6DJ8全段差動PPアンプ
- トランス式USB DAC内臓FET式差動ヘッドホンアンプ
- 6N6P全段差動PPミニワッターにヘッドホンジャックを
- トランス+真空管バッファ式USB DAC
- 残念で、そして哀しかったこと
- 71Aシングル・ミニワッター
- 全段差動PPアンプの製作(2)
- 全段差動PPアンプの製作(1)
- 聖地探訪
- 電子工作熱再燃す -トランス式USB DACを作る-