『ねじれた家』 -マザー・グースの唄が聞こえる-


第二十四回は、何の理由もなくふと手にとって読み返してみたアガサ・クリスティの『ねじれた家』です。本書のタイトルは、マザー・グースの童謡”there was a crooked man”(ねじれた男がおりました)の最終節”in a little crooked house”に由来する。
本文にも出てくるマザー・グースの歌詞を引用しておきます。

ねじれた男がいて、ねじれた道を歩いていった
ねじれた垣根で、ねじれた銀貨を拾った
男はねじれた鼠をつかまえるねじれた猫を持っていた
そしてみんな一緒にちいさな、ねじれた家に住んでいたよ

これだけでもう、不吉な事件を暗示させるに十分なほど、マザー・グースの童謡は底意地の悪いユーモアと皮肉に満ちている。

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さて、物語の舞台はロンドン郊外の高級住宅地、スウィンリ・ディーン。ギリシャから着の身着のままやってきて一代で莫大な財を築きあげた、ねじれた家に住む富豪の老人アリスタイド・レオニデスの突然の死とその家族をめぐって事件は幕を開けることになります。
いってみれば、この手の物語は掃いて捨てるほど巷にあふれていて、クリスティにも何冊か似たような物語があると記憶しているほどですが、忘れた頃にふと手にとってみる気にさせる安心感というか、懐かしさのようなものがあるような気がします。そして、読者がこうあってほしいと願うようにお決まりどおりに展開してゆく物語はある意味つまらなくもないが、登場人物それぞれの配置と書き分けによって無理なく読み進むことができる点は、さすがクリスティといえるでしょう。

ミステリーとしての内容は、一読あの有名な作品を連想してしまうほどで、それだけでネタばれしやすいくらいの物語ですが、それでも愉しく読むことができるのはやはりただならない筆力のなせる業なのだと思う。


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主に50~80年代の海外ミステリーの紹介を兼ねて読後感を綴っています。本格、倒叙、ハード ボイルド、冒険、スパイ、安楽椅子、ユーモア系等ジャンルは問わず読み散らかしてきました。ときには散歩の道をそれて50~70年代のモダンジャズやスキー、バラ園芸にもふれています。HP「気象と気候値のページ」も運営していますので、興味のある方は一番上のタイトルの下にある<気象と気候値のページへ>をクリックして是非お立ち寄り下さい。
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